「世にも奇妙な人体実験の歴史」にグッと心掴まれる [本]
コントで「爆発してチリチリ頭になって出てくる科学者」ってのがある。
そんなマッドサイエンティスト像ってのがよくある。
コミカルで変人。ただ、個人的にはそれほどグッと心を掴まれるわけではない存在。
けれど、歴史上、そんな危険な実験をいとわない人々は多数存在していた。
そのリアルはこういうことだ!……という本。
都市伝説的な噂話として、時々伝え聞く、治験のバイトってのがある。
管理された場所で、薬を飲んで、そしてわりと退屈に過ごし、結構高額の金銭を手に入れる。
だが、この本に記されているのは、もっとなんていうか雑で手っ取り早くて危険な人体実験。
例えば……「この気体は健康に良いだろうか?よし!吸って確かめてみよう!」
そんなの。そういう時代の話。
人体実験において大切なこと3つ!
「実験中に何が起きているのかを正確に把握すること!」
「どこまでが安全なのか知識を持っていること!」
「倫理的に問題ないこと!」
となると、自分の身体で実験するのが、合理的。
とはいえ、あまり安全ではないし死にそうになったり…死んだりする。
そんな話がたくさん載っているのだが、1つあげるとしたら「ビタミン」の話。
ビタミンCと怪我の治癒速度の関係を探るため
チーズとクラッカーとコーヒーだけの食事を3カ月続け、背中に6センチの傷をつけて実験した話。
体重が14キロ減り、壊血病になり8歳の時の虫垂手術痕も開いてしまったが、
「ビタミンCを多く摂取することで治癒能力を改善できる」ことを実証した。
葉酸欠乏症の実験ため、風味も歯ごたえもすべて消滅するまでボイルした食事を7カ月続けた話。
胸骨に太い針を刺して血球を検査し、喉から小腸にチューブを入れて内壁の組織を採取し、
そして念願の巨赤芽球性貧血を発症した。
勇気ある奇妙な人体実験の話と対になる話もある。
当時は、死刑囚や孤児院で人体実験するのは「税金で養っているんだから当然」という感覚。この感覚って、ゲームのアリスマッドネスリターンズの世界を連想する。イギリスっぽい。
あと、壊血病の猛威の記憶。例えば、出港時2千人いた乗組員が、帰ってきた時は壊血病で2百人になっていた、戦死者はわずか3名だったのに。
医療といえば、瀉血で血を抜くこと。コレラに対しては下剤や吐剤を与え、保険当局は「瘴気説」を支持し、囚人の危険な悪臭を消すために法廷は花で満たされたり。
そんな時代から現代へと向かう途中の、命を張った色々な話なんだな。そう思うとグッと心を掴まれるものがあるのですよ。
その奥にある好奇心と、命の重さ軽さの感覚に。
一九四〇年代、不発弾処理将校の平均余命は七〜十週間だった。
(世にも奇妙な人体実験の歴史 第12章 爆発に身をさらし続けた博士━━爆弾と疥癬)
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